中国赴日本国留学生予備学校(以下「赴日予備学校」と略す。)は、中国と日本の文化交流の一翼を担っている重要な教育機関です。1976年の文化大革命終了後、中国政府は改革・開放政策を開始しましたが、その一環として1978年7月に日本への留学生派遣の意向を発表しました。その準備教育機関として、1979年に赴日予備学校が吉林省長春市の吉林師範大学(現・東北師範大学)に設置されました。これに応える形で、日本国文部省(当時)は東京外国語大学を中心とした基礎日本語教師団と全国の高等学校から選抜された教員からなる専門日本語教師団を派遣しました。
日本語教育においては東京外国語大学外国語学部附属日本語学校(現センター)で行なわれている直接法が採用されました。直接法については当初中国では懐疑的な見方がありましたが、多くの応募者から選抜された学生たちの果敢な学習と日本人教師・中国人教師・事務スタッフの努力もあって、初期の赴日予備学校の教育は今日まで語り継がれるほどの伝説的な大成功を収めました。その伝統は今日に引き継がれ、本センター教員を団長とする基礎日本語教師団と東京工業大学教員を団長とする専門日本語教師団が毎年派遣されています。
1990年からは日本国文部省(当時)の国費留学生としての受け入れとなりました。また、派遣される留学生は中国教育部の要請により当初の学部段階から徐々に引き上げられ、2007年からは博士後期課程に進学する留学生となりました。現在では、毎年約100名の学生に対して、10月から基礎日本語教育が中国人日本語教員によって開始され、翌年3月下旬から7月中旬まで文部科学省から派遣される6名の基礎日本語教員と中国人日本語教員が協力して、日本の大学院での研究に必要な基礎日本語能力の習得を目標とした教育にあたり、8月開始の専門日本語教師団に引き継いでいます。
日韓共同理工系学部留学生プログラムは、韓国の高校卒業者を日本の国立大学の理工学部(4年制)に受けいれる日韓両政府の共同事業として、2000年度から始まり、現在第2次(2010年度~2019年度)に入っている。このプログラムでは、日本留学に必要な予備教育を、前半期(3月~8月)を韓国の慶煕大学で行い、後半期は日本で行うことになっている。
留学生日本語教育センターでは東京大学からの依頼により2000年度から2002年度まで、この事業の予備教育を行っていたが、東京大学からの再依頼および文部科学省の教育関係共同利用拠点(日本語教育・教材開発・実践教育研修)に認定されたことから、2013年度より予備教育を実施している。2015年度は東京大学に加え、お茶の水女子大からの学生も受けいれる予定である。